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2011.05.23 Monday

反竜伝記外伝 もう一つの物語  プロローグ

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    次の話を用意するまでまだ時間がかかりそうなので、とりあえず短編で繋ぎます〜。
    短編らしく(?)設定もろもろを無視した荒唐無稽な話なので、その辺はさらりと流してくれれば幸いです。 

     






     これは史実ではありえない、架空の話。無数に枝分かれした時間軸の一つに存在するかもしれない、もう一つの世界の物語である。



    『反竜伝記列伝 もう一つの物語』

     

     プロローグ

     

     面白くない。
     何度、その言葉を吐いただろう。十、百、いや、もしかしたら四桁に達するかもしれない。
    「……面白くない」
     今日もまた彼女はその言葉を吐いた。窓の縁に腰掛け、面白くもない空を見上げる。こんな格好をしていれば、また親父辺りにうるさく言われるだろう。年頃の娘がだらしない。上流階級の娘であることを自覚しろ。いい加減妹を見習え、と。
     妹、か。
     彼女は、一つ年下の、自分とは似ても似つかない少女のことを思い浮かべた。最後にあったのは、いつの頃だろう。たしか、この前修道院を訪問したのが五年前だった。あの時はお互い子供だった。だが、今は違う。そう、妹が修道院から呼び戻されたのも、彼女が成人の女性となったからに他ならない。
     ……結婚。
    「あーもう、やっぱり、面白くないわ!」
     イラついた末に、彼女は髪の毛をくしゃくしゃとかきむしった。もちろん、そんな悪態をついたところで虫の居所が収まるわけではない。
    「よし、決めたわ」
     何を決断したのか、彼女は用意したバッグにありったけの現金と宝石を詰め込む。おしゃれなポーチはあっという間にぱんぱんに膨れ上がった。それをよいしょと型に背負い込むと、彼女はテーブルに向かった。引き出しから一枚の羊皮紙を取り出す。紙面に書き殴る字で一筆入れた。
    『親愛なるクソ親父とお母様へ。お世話になりました。デボラ』、と。


     

     場所は変わって、こちらは港町ポートセルミ。
     正しくは、その港町の一角にある喫茶店の中に、一人の少年はいた。
     年の頃は十六。まだあどけなさの残る年頃だ。肩に届くくらいの、蒼天のような蒼い髪が印象的だ。だが、周りの客の目が真っ先にいくところは、彼の肩にのっかった小さな真紅色の生物だった。
    「ねぇ、ロム。あたしの記憶が確かなら、ここの朝食代で手持ちのゴールドが切れる頃よね」
    「正確には5ゴールドが残るよ。ここのジャムトーストとコーヒーセットが25ゴールドだからね」
     あろうことか、その生物は人語を喋ったのだ。喫茶店のマスターは自分の目を疑った。スライムが人の言葉を喋るなど、聞いたこともない。
     ロムと呼ばれた少年は、そういいながらぱりっとトーストの角を頬張る。
    「って、たった5ゴールドじゃ薬草だって買えないわよ! どーするのよ、明日からあたしたち、無一文じゃない!」
    「だ、大丈夫だよ、ベス。今、フェズリィさんとアイメルが、昨日受けた依頼の内容を訊きに、依頼主のところへ向かっているから。前金で1000ゴールドは貰えるみたいだし」
    「それが怪しいのよねぇ。いまどき、モンスター退治だってそんなに大金は出ないわよ。なんかやばい仕事じゃなきゃいいけど」
    「それでも、受けるしかないよ。なにせ、僕らには、ここのお金がないわけだし」
     そういって、ロムは懐のゴールド袋を取り出した。そこには、5ゴールドどころか、500ゴールドはありそうなほどに金貨が詰まっていた。だが、これを店に出したところで、良くて店から叩き出されるか、悪ければ役人を呼ばれた偽金容疑で逮捕、となりかねない。
     なぜならこのゴールドは、自分たちの世界で流通していたゴールドだからだ。


     港町の界隈を、異様なコンビが歩いていた。
     片や全身鎧に身をまとい、素顔すら鉄仮面で隠している大柄な戦士。片やもう一人は、亜麻色の長い髪に色白の美少女である。まさに、美女と野獣の二人組だった。
    「すまないなぁ、アイメル。一緒についてきてもらってしまって」
     鎧の戦士がすまなそうに頭を下げる。
    「気にしないでください。フェズリィさんだけじゃ、依頼主さんびっくりしちゃいますし」
    「だろうなぁ。さっきから、周囲の視線が痛いよ」
    「それにしても、フェズリィさん。ここってやっぱり、過去のポートセルミなのではないですか? 私も昔、母と一緒にこの町に行ったことがありますが、どうみてもここはあのポートセルミとうり二つです」
    「うーむ。だが、そうなると私たちが持っていたゴールド金貨と、この世界で流通しているゴールド金貨が違うということの説明がつかなくなる。ここはやはり、我々のいた世界とは微妙に異なる世界、つまり、パラレルワールドということになる。そうとしか考えられないのだよ」
     そういって、フェズリィはこの世界に迷い込んでしまった経緯を振り返った。
     

     彼らの世界は、魔界より現れた魔族達の侵攻にあい、混迷を極めていた。
     天空の勇者であるロム、魔法使いアイメル、戦士フェズリィの三人は、追っ手をかいくぐりながら、ラインハット王国へ向けて旅をしていた、はずだった。
     あの事件さえなければ。

     
     思いも寄らぬ事件に巻き込まれた結果、彼らは気がついた時、このそっくりだが微妙に細部が異なる世界に迷い込んでいたのだった。


    「けど、なんとか三人、じゃなかった、四人とも無事で良かったです。私一人だったら、どんなに心細かったことか」
    「そうだな。我々四人が無事だっただけでも幸運だった。まだ元の世界に帰る方法はわからないが、なに、そのうちどうにかなるさ。入ることはできたんだ。出ることだって、不可能じゃないはずさ」
    「ふふっ、それじゃ、とりあえずは当面の活動資金を集めなければいけませんね。フェズリィさん。依頼主の方は、この先の船舶ドックの入り口前で待っているんですよね?」
    「あぁ、我々にその依頼を紹介した冒険者がいうにはそうらしい」
    「依頼の又回しなんて、聞いたことありませんけどね。あまり変な内容じゃなければいいんだけど」
    「話によると、さる止ん事無きご令嬢の護衛、だそうだが……」
    「フェズリィさん?」
     アイメルはフェズリィが何やら考えごとをしていることが気になった。
    「いや、まさかな。さぁ、アイメル、いこう。依頼主を待たせてはいけない」
     気のせいだろう。フェズリィはまさかと思った一つの可能性を脳内でもみ消した。そんな偶然があるはずがない、と。
     だが、彼の予感は的中してしまうことになる。

     

    「あらあら、まぁまぁ、ボディガードの方が来てくれると聞いたのだけど、まさかこんなゴツい……いえ、屈強な戦士様が来て頂けるとは、思いもしませんでしたわ。おほほほほ」
    「は、はぁ」
     ところ変わって、ここは先ほどロムが朝食を食べていた喫茶店。依頼主を連れてフェズリィ達はロムと合流した。
     案の定、ロムは依頼主……に引き連れられた少女に目を丸くしている。それもそのはずだ。彼女はロムにとっても、よく知る人物だった。
    「それにしても、見事な鎧ですわね。ラインハット製? それともエンドール製かしら? 私、こうみえてもちょっとした」
    「ところで、シスター。我々の仕事内容はそちらのご令嬢をサラボナという町に送り届ける、ということでよろしかったでしょうか?」
     連打の如く喋り続けるシスターを見かねて、フェズリィは口を挟んだ。
    「えぇ、そうです。こちらのフローラ様はサラボナの大富豪ルドマン様のご息女で、結婚を控えた大事な身。くれぐれも怪我などないよう、無事にサラボナまで送り届けてくださいましね」
    「フローラです。みなさま、よろしくお願いします」
     そういって、少女、フローラはにっこりと天使のような微笑みを浮かべた。
    「えぇ、よろしく。まさかこんなかわいらしいお嬢さんだとは思ってもみませんでしたよ。おっと、自己紹介が遅れてましたね。私はフェズリィ。見ての通りの、旅の戦士です。こちらは魔法使いのアイメル。こっちの少年は私の弟子でロムとスライムのベスです」
    「フェズリィさんに、アイメルさん、ロムさん、ベスさん、ですわね。短い間ですが、お世話になりますわ」
    「は、はい。こちらこそ」
     差し出された手に、ロムはためらいがちに握手した。
    「あら?」
     手と手が触れた瞬間、突然お互いの身体に衝撃が走った。
    「あの、以前どこかでお会いしたことがありましたか?」
    「き、気のせいだと思いますよ。あなたとは、今日が初対面ですし」
    「そうですよね。でも、なぜかあなたとは他人のような気がしませんわ。こんな感覚は初めて」
    「あらあら、フローラ様、もしかしてロムさんに一目惚れとか?」
    「ご、ごほ、ごほっ!」
     シスターのよけいな一言に、ロムはむせかえった。シャレにならない。
     そんなロムの気持ちがわかるのか、フェズリィは無言で彼の肩をぽんと叩いたのだった。

     

     

     


     

     

     

     

     

     
     

     

     


     

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