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2016.10.09 Sunday

反竜伝記Afterstory ACT9 さらわれたアイメル

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    うーん、今年中には完結しそうにありません(汗)。

    とりあえず、どうぞ!

     

     

     

     

     

     

     

     逃げるようにポートセルミを脱出して一週間後。時刻は正午頃。まだ日が高い中、ロム達は無事にルラフェンの街へとたどり着いた。
    「本当にここにアイメル達が待っているんだろうか」
     打ち合う場所をあらかじめ決めておいたわけではない。だが、ポートセルミからもっとも近い宿場町といえば、ルラフェンしかない。病人である異界の勇者ユーリアをつれたまま、長旅をするわけにはいかないという事情を顧みれば、ここ以外に選択肢はないはずだった。
    「道に迷いそうな街ね」
     リーシャがつぶやく。ルラフェンの街は入り組んだ狭い路地に建物がひしめき合うという独特の街作りになっており、土地勘のない人間にとってはまさに迷路そのものだった。
    「安心しろ。この街は以前来たことがあるが、だいたいの構造は覚えている」
    「あてにしているよ、エリオス」
     そういってロムはパーティの先頭を彼に代わった。
     方向音痴のロムがこの街に案内なしで入ったら、冗談抜きで本当に遭難してしまいそうだ。
    「さて、どうする。ひとまず、宿にでもいくか」
    「いや、その前に武器屋に寄ろう。今の装備では、少々心許ないと思うんだ」
     ロムの装備は鋼の剣と鉄の盾だ。戦士としてはポピュラーな装備で、両方ともそこらの魔物相手なら申し分ない代物だが、漆黒の騎士や彼が率いる魔物と戦うには役者不足だった。
    「そういうことなら、腕のいい鍛冶師のいる店を知っている。そこにいこう」
     と、エリオスは言った。

     

     ロム達は街の東にある武器と防具の店に立ち寄った。
    「いらっしゃい。どんな武器をお求めかな?」
     子供ほどの背丈の、だが、筋肉隆々の屈強な男がこの店の主人だった。
     近頃ではめっきり数が減ってしまったドワーフ族の男で、凄腕と評判の鍛冶職人だった。
    「久しぶりだな、ドワーフの旦那」
    「おぉ、これはエリオス様じゃありませんか」
     エリオスの顔を人目みたとたん、主人の頬がほころんだ。
    「知り合いなのかい?」
    「何を隠そう、この隼の剣を鍛えてくれたのが、ほかでもないこの方なのだ。それよりも旦那。今日訊ねたのは他でもない。このロムという男に必要な剣と盾を見繕って欲しいのだ」
    「ほう、ではあなたが、エリオス様がお話になっていた天空の勇者……」
    「もう、勇者ではありませんけどね」
     ロムはそう断ってから、彼に簡単に事情を説明した。さすがにゾーマのことは伏せて、だが。
    「……というわけで、やっかいな魔物と戦わなければならないんだ。だけど、今あるこの剣と盾だけじゃ」
    「なるほど。ですが、残念ながら、うちには勇者様の目にかなう武器など……あ、いや」
     はっ、とドワーフの親父は手を叩いた。
    「そうだ。あれがあった。うってつけの剣と盾がありますよ。ちょっと待っててください」
     そういって、店主はしばし店の奥へと入っていった。少し経ってから、彼は見事な二つの業物を携えて戻ってきた。
    「お待たせしました。これですじゃ」
     ロムはその剣と盾を人目見て、あまりの美しさに目を奪われた。
     剣は刀身が銀色に輝く両刃の剣で、柄には紅い宝玉が神秘な輝きを讃えている。かたや盾はというと、これまた見事な代物で、剣と同じく銀色に輝き、美しい装飾が施されている。
    「すごい。これを、ご主人自ら?」
     その問いに、ドワーフの鍛冶師は首を横に振った。
    「いや、こいつはわしの亡くなった師匠が鍛えたものですじゃ。わしの腕では、とてもじゃないがここまでの武器を生み出すことはできません」
    「そうですか。それにしてもこの剣と盾。どことなく、天空の剣と盾に似ているような気がしますが」
     その問いにドワーフの親父はにやりと笑って、言った。
    「それもそのはずですじゃ。その剣は、わしの師匠が天空の剣を模倣して作った代物なのですじゃ」
    「なんですって! て、天空の剣を!?」
     驚いて、ロムはその剣を見直す。
    「伝説の武器を、自分の手で作ってみたい……長年の夢を叶えるために、わしの師匠は持てる技術のすべてを使って、この剣を鍛えたのです」
    「そうだったんですか……
     ロムは剣を直に手に取ってみた。とても軽い。そして、握っているだけで不思議と活力を与えてくれるこの感覚には覚えがある。そう、かつて天空の剣を振るっていた時と同じ感覚だ。この剣はそれよりも幾分弱いが、それでも、魔族を相手にするにあたって、これほど頼りになる武器は他にないだろう。
    「これは……そうか、オリハルコンで出来ているのか」
    「オリハルコン?」
     ロムの声に、エリオスが疑問の声を上げる。
    「神の金属と言われるレアメタルさ。何を隠そう、天空の武具は、オリハルコンで出来ているんだ。しかし、天空の武具以外で、オリハルコン製のものを見たのは産まれて初めてだよ」
    「いいえ、残念ながら、その剣と鎧に使われているのはオリハルコンではありません。師匠はオリハルコンを求めて世界中を旅したのですが、残念ながら少量しか見つけることができませんでした。この剣に使われているのはオリハルコンと鋼鉄の合金なのですのじゃ」
    「そうなんですか……」
     確かに、この剣と盾はあの真っ白な天空の武具と比べると、幾分グレーに近い配色をしている。鉄の成分が影響しているからだろう。
    「残念だな。もし、本物のオリハルコンがあれば、これ以上のものができそうなのだが。おいロム、お前の城にある天空の装備で、なんとかできないか?」
    「え?」
     エリオスは、天空の装備を一度溶解してみないかといっているのだろうか。
    「そんなばちあたりなことできないよ! それに、天空の装備はもう効力を失ってしまっていて、何の力も持ってないみたいなんだ。僕が勇者の力を失ったのと同じ時からね」
    「わ、悪かった。ちょっと言ってみただけだって」
     すまんとエリオスは謝る。
     そんな二人のやりとりを見ながら、
    「さぁ、受け取ってくだされ」
     そう言って、なんとドワーフの鍛冶師は代価を要求することなく、手にした剣と盾をロムに差し出した。
    「そんな。タダで受け取るわけにはいきませんよ」
    「いえ、おかまいなく。どのみちこの剣と盾は並の剣士には使いこなせません。それに、少しでも強い武具が必要なのでしょう? 天空の剣と盾には遠く及びませんが、この地上でこれ以上のものは、なかなかありますまいて」
    「しかし、タダで受け取るわけにはいきません」
     そういって、ロムは手持ちのゴールド袋すべてをテーブルに置いた。
     二万ゴールドは入っているはずだ。
    「オリハルコン製の武器としては、ちょっと足りないかもしれませんが……」
    「とんでもない。お心遣い、痛み入ります。では、遠慮なくもらっておきます。そのかわりと言ってはなんですが、もし、旅先でオリハルコンの原石を手に入れることがあったら、ぜひ寄ってください。今度こそ、オリハルコン製の武具をこしらえてごらんにいれましょう」
     そう言って、店主は笑った。

     武器屋を出た一行は、メインストリートに戻るべく、再び元来た道のりを歩き出した。
     オリハルコンと鋼鉄の合金の剣と盾……ハーフオリハルコンソードとシールドは思わぬ収穫だった。魔族相手にはいささか力不足は否めないが、普通の魔物程度なら申し分ない威力と防御力を兼ねそろえていそうだ。
    「さて、そろそろアイメル達と合流しなくちゃ。しかし、一体どこにいるんだろう」
    「とりあえず、宿にでも行ってみるか。このルラフェンで宿といえば一軒しかないからな」
     エリオスの提案で、ロム達は街の入り口近くにある宿へと向かった。
     

     ルラフェンの宿は、二階建ての一際大きな建物だった。
     入店すると、なにやらラウンジは慌ただしい雰囲気だった。
    「おい、医者はまだ来ないのか! 早くしないとやばいぞ」
    「さっき使いを呼んだばかりじゃないか。落ち着きなって!」
     中年の宿屋の主と、その妻の慌てようは尋常ではない。
    「あの……」
     遠慮がちにロムが話しかけると、
    「あぁ、お客さんですか。すみません。ばたばたしちゃって」
     店主はハンカチで汗を拭きながら言った。
    「なにかあったんですか」
    「行き倒れですよ。うちの前でね。男の方と女の方。それに一匹の魔物。三人ともひどい怪我でね。慌てて客室に運んだんですが、虫の息でして、こりゃあ今晩持つかどうか……」
    「男女に、一匹の魔物……?」
     なんだろう。ロムはこの時、ひどく嫌な予感が脳裏によぎった。
    「失礼。その魔物というのは、もしかしたら、キメラではなくて」
     リーシャが胸の動悸を押し殺しつつ、訊ねた。
    「え? どうしておわかりで?」
     その言葉ですべてを悟った。
     悪い予感は当たってしまったのだ。

     宿屋の主にわけを説明して、ロム達は重病人がいるという二階の客室に急いだ。
     閉じられた扉に手をかける。ここを開けて、もしアイメル達ではなかったら……いや、そうであって欲しい。
     そんなはかない希望を抱きながら、ロムは扉を開けた。
     ……むろん、そんな都合のいい奇跡など起きるはずもなかった。

     目の前に飛び込んできたのは、身体中包帯が巻かれた、痛々しい姿の男性だった。
    「セイン!」
     その名を叫んだのはロムではなく、リーシャだった。
    「うっ、リーシャ、か。ロム達と一緒だったのか」
     寝たままのセインが、か細い声で言う。
     まさに満身創痍といわんばかりの状態だった。宿屋の主が言うには、彼がもっとも重体だったらしい。袈裟懸けに斬られており、鎖骨が砕かれ、傷は心臓ギリギリにまで達していたという。出血が酷く、生きているのが不思議なほどだった。
    「ひ、酷い怪我だ。一体、誰にやられたんだ!」
    「ゾーマの手下だ。お前達と別れてからしばらくして、やつらに見つかってな。戦ったんだが、ヤツには私の魔法が通じなかった……それで、このザマさ」
     賢者のセインの魔法が一切通用しなかった……そんな恐ろしい魔物がいたこと自体が衝撃的だった。
    「しかし、そんな奴と戦って、よく無事に逃げ出せたものだ」
     彼の横のベッドにいたのは、ユーリアだった。幸いなことに彼女は無傷だったが、顔色はこの前会った時よりも青白い。
    「ユーリアは無事だったか」
    「そ、そういえば、メッキーとアイメルは!?」
    「……メッキーは、死んだ」
     セインの口から聞かされたのは、無情な仲間の死亡通告だった。
    「オレ達を逃がすために、深手を負っていながら、ルーラを唱えてくれたんだ。立派な最期だった、ぜ。そして、アイメルは、さらわれてしまった……」
    「一体だれに!? 漆黒の騎士か!」
     ロムが詰め寄る。
    「や、やつより、やばい奴だ。や、奴の名は、真・四魔将のうちの一人……」
    『そう、キラーマジンガサマだ』
     その声は、ロムのすぐ近く、首筋から聞こえてきた。
     ハッとして、彼はすばやくそいつを振り払う。
     いつの間に背後に現れたのか、そいつは、見たこともない奴だった。
     人の頭ほどの球体に短い手足がついた、一頭身の化け物だった。しかも、全身固い装甲に覆われている。その黒いモノアイは、あのキラーマシンにそっくりだった。
    「い、いつの間に後ろに!?」
    『ケケケ、俺様は機械だからなぁ。気配なんて感じないのよォ。あのまま殺してもよかったんだけど、それじゃああまりにもおもしろくないからな』
    「お前が、セイン達をこんな目に遭わせたやつか!?」
     ロムはすかさず剣を引き抜いて構えた。
    『おうよ、俺様はゾーマ様に忠誠を誓いし真・四魔将の一体、キラーマジンガ様よ。もっとも、今お前達の前にいるこの身体は遠隔操作で動かしている単なる子機(ビット)で、本体は別のところにいるんだがなぁ』
    「今すぐアイメルを返せ!」
     ロムはそういって飛びかかろうとするが、
    『おっと、やめといた方がいいぜぇ。俺様がその気になれば、この身体を自爆させて、この宿もろとも木っ端みじんに吹き飛ばすことだってできるんだぜ? セインやユーリア、それに無関係のこの宿の人間が犠牲になってもいいのかな』
    「くっ……!」
     それを聞いて、しぶしぶロムは動きを止める。
    『そうそう。それに俺様は戦いに来たわけじゃねぇ。それに、アイメルとかいったか。その女は無事だ。今のところはな。ほれっ!』
     ドンッ、と何かを叩く音がした。
    『ロ、ロム……! きちゃだめ!』
     それは、確かにアイメルの声だった。
    「アイメル!?」
     キラーマジンガの口から(この時代には当然ないものだが、スピーカーから)アイメルの声が確かに聞こえた。
    『私のことはいいから、あなた達はゾーマを……!』
    『うるせぇ! よけいなことはいわなくていいんだよ!』
     ゴッ、と殴る音がした。
    「おい、乱暴はやめろ!」
    『安心しな。気絶させただけだぜ。こいつは大切な人質だからなぁ。明日の夜明けまでに、ユーリアをつれてここから北西の岬へ来い。ルラムーン草が採れる岬といえば、この辺ではここしかないんだろう? そこで人質を交換しようぜ。そうすれば、この娘は帰してやる。もし、ユーリアを連れてこなかったり、約束の時間に間に合わなかったら、この娘はどうなるか……言わなくてもわかるよなぁ?』
    「くっ、卑怯なっ!」
     リーシャが歯を食いしばって言う。
    『じゃあな、いい返事を期待しているぜ。あばよっ!』
     そういうと、ビットと名乗ったキラーマジンガの分身が光り出す。
    「あぶない、伏せろ!」
     エリオスが叫ぶと同時に、ビッドは爆発した。
     すごい勢いで破片が飛び散る。ロムはすかさずセインの前に立ち、買ったばかりのハーフオリハルコンシールドで彼らを守った。
    「何が宿屋を吹き飛ばすほどの威力がある、だ。単なるイオ程度の爆発じゃないか」
    「してやられてな……いろいろと」
     エリオスも隼の剣を鞘に納めた。
     ……しばらくの間、誰もが言葉を発することができなかった。
     それほどまでにショックが大きかった。メッキーの死。重体のセイン。そして、捕らわれたアイメル。
    「……ロム、どうする」
     呆然としていると、エリオスが慎重に訊ねてきた。
    「このまま、アイメルを見殺しにするか、それとも……」
    「……ッ」
     その質問には、軽々しく返事はできなかった。
    「わ、わからないよ。どうしたらいいのか……」
     自分でも情けないと思いながらも、ロムはただただ首を横に振るしかなかった。
     誰もが、絶望にうちひしがれた、その時だった。
    「わたしを……」
     それは、初めて聞く声だった。
    「……わたしを、連れて行って」
     驚いてロムは振り向く。そこには、か細い腕で必死に身を起こし、真剣な目でこちらを見つめている、異世界の勇者の姿があった。

     続く
     

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