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2016.06.07 Tuesday

反竜伝記 Afterstory ACT6 強敵、漆黒の騎士!

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     かつての仲間メッキーを訪ねに、ロム達はポートセルミへとやってきた。
     そこで彼らは盗賊ギルド所属の山賊ウルフ、ゾルと出会う。
     胡散臭いと知りつつも、彼からメッキーの居場所の情報を買うのだった……


    「ここ、か?」
     ゾルが残した情報を頼りにロム達は鉄製のドアの前に立っていた。
     そこはスラム街の奥深くにある細い横丁だった。びっしりと蔦と苔が生えた石造りの建物が隙間なく軒を連ね、石畳の細い道にそって続いている。周囲には人の姿はなく、閑散としていた。空家も多く、ところどころの窓にはベニヤ板が打ち付けられている。そして、彼らが立っているのは、その空家とおぼしき一軒だった。
    「おい、やっぱりガセネタを掴まされたんじゃないだろうな」
     そういうエリオスを尻目に、ロムは扉をノックした。
     一度、二度ノックしてみるが、反応がない。
     諦めて、ため息をつきそうになった時だ。
    「……誰だ?」
     扉の中から、声が聞こえた。
     声のトーンは低い。こちらを警戒していることが、声色からうかがえる。
    「メッキーかい。ぼくだよ。ロムだよ」
    「……」
     ロムの声は聞こえているはずだが、返事はなかった。
     おかしい。ロムは妙に感じた。この聞き覚えのある声は、間違いなくメッキー。けど、彼はまだ警戒心を解かないでいる。
    「……お前さんが本物のロムだっていうなら、それを証明してみせろ。でないと、ここを開けてやるわけにはいかんな」
    「ずいぶんと、用心深い奴だな」
     と、腕組みしながらセイン。
     ロムは口元に手を添えてしばし考えた。やがて、妙案が浮かぶと再び扉の向こうのメッキーに向かって口を開けた。
    「子供の頃、フィアと遊んでたらおじいさんの大事な壺を割ったことがあった。メッキーはそれを、自分がやったってかばってくれたよね。その時君はこういった。このことは貸しにしておいてやる。大人になったら倍返ししてくれればいい。と」
    「……ったく、とんでもなく昔の話じゃねぇか」
     錠が外れた音がして、扉が開いた。
     そこにいたのは、一匹のキメラだった。
     ヘビのようなしっぽに、鳥のようなくちばしと羽を持つ魔獣。それがキメラだった。
    「よぉ、久しぶりだな。まぁ、とにかく入れ。わけあって、オレがここにいられることが知られちゃまずいんだ」
    「わ、わかった」
     再会の感傷もほどほどに、一行は家の中に入った。
     再び、メッキーが扉に鍵をかける。その上で閂まではめるという念の入れようだ。
    「まぁ、なんだ。しばらく見ないうちにまたでかくなったな。ロム」
    「ぼくの成長が止まっていることはしっているはずだろう?」
    「ガキの頃と比べて、だよ」
     ようやく警戒心を解いて、陽気な声でメッキーが言った。
    「おっと、そうだ。仲間を紹介するよ。まずは」
    「もう知ってるよ。アイメルに、元エンドール皇子のエリオス。そして、異界の賢者セイン、だろう」
    「驚いたな。私のことまで」
     セインは目を丸くして言う。
    「オレのところには、いろんな情報が流れてくるからな。そうそう。お前達、ゾルにあっただろう」
    「そうだけど、なんでわかるの?」
    「簡単なことさ。あいつに道案内を頼んでおいたんだよ」
    「なっ! あいつ、そんなことは一言も言わないで!」
     エリオスは顔を真っ赤にして言った。
    「まんまと一杯食わされたよ」
    「まぁ許してやれ。あいつなりに、おまえらが信用に足る人物か品定めしたかったんだろう。オレの、ここでの数少ない友人だしな」
    「そういうことでさぁ」
     と、奥の部屋からひょっこりとあの山賊ウルフが顔を出した。
    「あっ! お前、こら、金返せ!」
    「やばっ!」
     そそくさとゾルは逃げだし、エリオスはかんかんになって彼の後を追いかける。
     どうやら、最初から二人は結託していたようだった。ロムは呆れつつも、したたかなこの二人に怒る気にもなれず、後ろ髪を掻きながら苦笑した。


     憮然としているエリオスもなんとか落ち着きを取り戻し、改めて彼らは応接間に通された。
     そこはお世辞にも清潔とは言いがたい空間だった。薄暗く、ほこりっぽい室内には、つぎはぎだらけのソファーと、きばんで変色した木製のテーブルがおいてあるだけだ。テーブルの上に置かれた錆びたランプの明かりだけが、弱々しい光を発している。
     ロム達はソファーに座ると、ここに来るまでの経緯を話してきかせた。
     異界の賢者セインとの出会いから、旅の目的まで。
    「にわかには信じられない話だろうが……」
    「いや、信じるさ」
     セインの言葉に、メッキーはためらいもなくうなずいた。
     そして、一同にとって衝撃的な台詞を吐く。

    「なにせ、あんたらが探しているお仲間のうちの一人は、いまこの場所にいるんだからな」



     そのメッキーの言葉を聞いた時、セインはしばし我を忘れていた。唖然とした顔が、みるみる険しいものに変わっていく。
    「本当か! 嘘をいっているのではないだろうな!」
     乱暴に詰め寄る。
    「ほ、本当だ。嘘じゃない」
     その剣幕に圧倒されて、メッキーはどもりがちにうなずく。
    「……ついてこい」
     そういうと、メッキーは廊下へと出た。
     奥の突き当たりまでいく。そこから先は行き止まりだった。何の変哲もない白い壁。だが、メッキーはかまわず壁に向かって突き進んでいく。
     ぶつかる、そう思ったそのとき、信じられないことが起きた。
     メッキーが壁の向こう側へと消えたのだ。まるで幽霊のように。
    「なるほどな。幻(マヌーサ)の呪文の応用か。半永久的に持続するタイプのものだな」
     と、セイン。
     一行が壁を抜けると、さらに廊下が続いていた。
     その先には二階へと続く階段があり、そこを上ると、小さな部屋に出る。
     そこは窓すらない、殺風景な部屋だった。
     薄暗い空間に、パイプ式のベッドが置かれているだけで、家具や燭台のたぐいは一切ない。
     そして、そのベッドに、白い寝間着を着た黒髪の少女が寝かされていた。
     ロムは最初、この少女は死んでいるのではないかと思った。寝息すら立てず、目を閉じて意識を失っている。頬はやせ細り、血が通ってないのではないかと危惧するほどに白い。
    「おぉ、なんということだ」
     セインはよろよろと彼女に近寄り、跪いた。
    「ユーリア」
    「えっ、では、この子が」
    「そうだ。勇者ユーリアだ」
     棒のように細い手を両手で包み込むように握り、セインは呟いた。
    「まさか、こんなに早く見つかるとはな。しかし」
     エリオスは眉間にしわを寄せている。
    「だいぶ衰弱しているようだ。メッキーとやら、どうやって彼女と」
    「あぁ、それは一週間ほど前のことだ。俺の耳に、妙な情報が飛び込んできた。怪しげな連中が、二人組の少女達を血眼になって追っているってな。で、ちょっと調べて、その子達が隠れているこの町の下水道に行ってみたのさ」
    「その二人組とは、ユーリアと、もしや」
    「あぁ、お前さんの読み通り、女の武道家さ。名前は確か、リーシャといったか。二人とも、ひどい怪我をしていた。特にユーリアの方はいつ死んでもおかしくない状況だった。俺はこの子達をうちまで連れていき、こうしてここに匿っているってわけさ」
    「そうだったのか」
     ほっと、セインは胸を撫で下ろした。
     満身創痍の状態とはいえ、探していた仲間の無事が確認できただけでも幸いだった。
    「そうだ、セイン。君は賢者なら、治癒呪文が使えるだろう! それで、彼女を直してやれば」
    「そ、そうだった。よし」
     ロムのアドバイスに従い、セインは精神を集中する。
     すると頭上に掲げた手から、淡い光が宿った。
    「この者の怪我を癒やしたまえ、ベホマ!」
     セインは生み出した光をユーリアの身体に注ぐ。
     誰もがこれで一安心と思った。だが、
    「ああああああっ!!!」
     突然、ユーリアは堰を切ったかのように苦しみだした。
     細い手でシーツを強く握りしめ、苦悶の表情でもだえる。
    「ユーリアッ!」
     その豹変に、慌ててセインは術を中断させる。
    「こ、これは、どういうことだ。治癒呪文が、逆にユーリアの身体に苦痛を与えてしまっている……!?」
    「まさか……」
     この症状に、アイメルは思い当たる節があった。
    「これ、魔障なの」
    「知っているのか、アイメル」
     ロムが訊ねる。
    「ロム、彼女は魔障に犯されているわ。魔障とは、邪悪な気に身体が冒されてしまうこと。魔障に犯された人間は、徐々に体力と精神を蝕まれ、やがては衰弱して死に至るというわ。そして、治癒呪文は、この魔障には逆効果なの。身体を蝕む闇の力が、治癒呪文に抵抗して、身体に苦痛を与えてしまうから」
    「おそらく、ゾーマとの戦いの時だろう」
     セインは思い返していた。
     あの戦いで、ユーリアはゾーマに痛恨の一撃を食らっていたのだ。その威力は、身につけていたオリハルコン製の鎧まで貫いて、彼女に深刻なダメージを与えていた。
     その時に、魔障に犯されてしまったのだ。
    「なんということだ。思いの外早く勇者を見つけられたと思ったら、厄介な病に冒されているとはな。それでアイメル、治す方法はあるのだろう」
     セインが訊ねる。
    「魔障には、聖水が一番効くの。でも、大魔王ゾーマほどの敵から受けたのでは、普通の聖水が効くかどうか……」
     言いつつ、アイメルは道具袋から聖水の瓶を取り出した。
     コルクを取り、中身の透明の液体をユーリアに向けて振りまく。
     聖水の聖なるオーラが、彼女の身体を包み込んだかに思えた。だが、そのわずかな希望も、彼女の身体からあふれ出たどす黒い瘴気に掻き消されてしまう。
    「だめか。くそっ」
     セインは拳を壁に叩きつけ、無力な自分を呪った。
     しばしの沈黙が場を支配する。やがて、なんとか場の空気を変えようと、ロムが口を開いた。
    「……メッキー。それで、リーシャ……さんは今どこに」
    「それが、昨日から行方が知れないんだ。書き置きすらなかったので、心配しているのだが」
    「きっと、ユーリアに効く薬か腕の立つ僧侶を探しに飛び出していったのだろう。鉄砲玉のような娘だからな。今頃、メッセージの一つでも残していけばよかったと思っている頃だろう」
     セインはリーシャという少女のことをよく理解しているようだった。
    「こういう時、母さんがいてくれたら」
     ロムはぽつりと声を漏らした。
     彼の母フローラは、かつて勇者エルフォーシアと呼ばれた女性の生まれ変わりだ。その知識は膨大で、魔障のことについても何か知っているに違いない。
    「だが、今からグランバニアに戻るわけにも……」
     ポートセルミとグランバニアを往復するだけでも何週間もかかる。とてもじゃないが、ユーリアの身体が保たないだろう。
    「くそっ、勇者としての力が残っていたら、ルラストルで一瞬でグランバニアに転移することだってできたのに。いや、それどころか、シャナクの呪文で……」
    「まって、ロム! 今、なんて」
     アイメルがはっと声を上げた。
    「ルラストルで」
    「その後!」
    「シャナクで……あっ!」
     そうである。
     魔障に対抗できる呪文が、ないわけではないのだ。
     呪いや邪悪な力を祓う呪文、シャナク。
     それならば、もしかしたら魔障にも効果があるかもしれない。
    「ちょっとまて。シャナクというのは、勇者にしか使えない呪文だろう。どのみち、ロムではもう唱えられまい」
     と、エリオス。
    「まて! シャナクなら、唱えられる!」
     セインがはっきりと言った。
    「こちらの世界では勇者にしか唱えられない呪文だろうが、私達のいた世界では経験を積んだ魔法使いなら、誰でも唱えることができるんだ」
    「やったな、セイン!」
     エリオスが彼の肩に手を乗せる。
    「そうと決まれば、早くその呪文を……」
     と言いかけた、その時だった。
     突然、激しい爆発音が轟いた。
     激しい振動が部屋中にビリビリと伝わり、足下を揺さぶられたロム達は思わずよろめく。
    「な、なんだ!」
    「この爆発は、イオラ。呪文よ!」
     アイメルが叫ぶ。それは何者かがこの建物のドアをぶち破ったことを意味していた。
     ……一体、誰が。
     光の教団は、すでに壊滅した。もうこの世界で、ロム達に敵対する勢力は存在していないはずだ。
    「まさか、ゾーマの手の者か」
    「そんなはずがない!」
     セインの声に、ロムは否定した。
    「ゾーマは今、マスタードラゴン様が身をもって封印しているんだ。百年間はその封印は破られないはず」
    「今はそんなことを言い合ってる場合か!」
     と、メッキーが叫んだ。
    「この隠し部屋の存在がばれるのも時間の問題だ。その前にここをずらかるぞ!」
     そういうと、メッキーはロムとエリオスにユーリアを抱き起こせと目で伝えた。
     言われた通り、二人でベッドで寝ているか弱い少女を慎重に支える。
    「でも、ずらかるっていったって。どうやって。この部屋には、僕等が入ってきた扉以外に出入り口はないみたいだけど」
    「なぁに、簡単なことよ。セインとやら、天井にでっかい穴を空けてくれ! 遠慮しなくていいから!」
    「……そういうことか! なら、遠慮なく!」
     セインはためらいなく、頭上に向けてイオの光球を放った。
     小さいが膨大なエネルギーを含む光の弾は、天井を貫通した。そのまま屋根を突き破り、空中まで飛び出たところで爆発する。
     間髪いれずに、メッキーはルーラの呪文を唱えた。
     一瞬で、その場にいた全員の身体が宙に浮き、空いた穴から大空へと飛び上がった。



     建物から少し離れた噴水広場に、一行は着地した。
    「おいおい、ルーラは許可制じゃなかったのか?」
    「そいつは知らなかった。いつの間にそうなったんだい?」
     情報屋らしからぬセリフを吐いて、メッキーは辺りを見回した。
     すぐ近くの民家から火の手があがっている。むろん、彼のアジトだ。
     メッキーの隠れ家からこの噴水広場までは、歩いて数分ほどの距離である。ここも安全とは言えない。
    「とにかく、一刻も早くここを離れるぞ!」
     全員異論はなかった。
     一行は噴水広場を突っ切った。そして密集した住宅街に出る。その中の細い路地をジグザグに走った。
     やがて、町全体を覆っている高い外壁につきあたる。
     ここを越えれば、ポートセルミから出られる。
    「ちょっと高いな」
     塀の高さはロムの身長の二倍はある。一人なら飛び越えられない高さではないが、今はユーリアを抱えている。
    「なら、この壁をぶち破って」
     セインが再びイオの呪文を唱えようとした、その時だった。
    「おっと、そこまでだ」
     低い、男の声が後ろから響く。
     振り向くと、そこには全身鎧を身に纏った戦士の姿があった。
     身体全体を漆黒の装甲で覆い、顔すらも拝むことはできない。小手越しに、両刃の大剣を片手で軽々と持っている。
     彼がメッキーのアジトを襲った張本人だった。
    「貴様、何者だ!」
     セインが叫ぶ。
    「その小娘をこちらに渡せ。この世界の元勇者よ」
    (ロムのことを、知っている!?)
     アイメルは驚きの眼で彼を見た。
    「お前は、ゾーマの手の者か」
     ロムはいつでも剣を抜ける体勢を取る。
    「いかにも。我はゾーマ様に忠誠を誓う真・四魔将のうちの一人。漆黒の騎士!」
    「真・四魔将だと!」
     その名に、セインは覚えがあった。
     ゾーマ四魔将。文字通り、ゾーマの配下の中でももっとも格上の魔物達だ。バラモス、ボストロール、やまたのおろち、キングヒドラの四体を指す。
     だが、そのどれも、ユーリアによって倒されたはずだ。
    「ちぃ、やっぱりそうか」
     ただ一人、メッキーだけがその名を聞いて合点がいく様子だった。
    「ゾーマは、新たな四魔将を作ったということは……やはり」
    「その通りよ。ゾーマ様はかのマスタードラゴンを退けたのだ! そして、逆に竜の神を封じ込めることに成功したのだ」
    「嘘だ!」
     ロムが叫んだ。
    「マスタードラゴン様が……そんなはずがない! あと百年は食い止めると、僕におっしゃったんだ!」
    「バカめ。精霊ルビスをも封じ込めたゾーマ様の闇の力が、この世界の竜神ごときにいつまでも遅れを取ると思っていたのか!」
    「くっ」
     なんということだ。百年の猶予があるとばかり思っていただけに、ロムは自分自身の読みの甘さを痛感せざるをえなかった。
    「絶望するのはまだ早いぞ、ロム」
     彼を励ますように、セインは言った。その顔は笑みすら浮かべている。
    「今更、四魔将などという手先を組織しなければならなかった理由は、しごく簡単だ。さすがのゾーマも、マスタードラゴンを封印するのにかなり手こずったのだろう。消耗しきってしまい、満足に動けないからだ。そうだろう!」
     自信ありげに、彼は指先を敵の鼻っ柱に突きつけた。
     その思わぬ反撃に、漆黒の騎士は一瞬たじろぐ様子を見せたが、
    「……ふん、だからどうしたというのだ?」
     すぐに余裕とい名の衣を身に纏う。
    「貴様らごとき、ゾーマ様自ら手を下すまでもないわ。呪いで動けぬ勇者と、力を失った元勇者。そしてその他のザコなど……」
    「言ったなっ!」
     ザコ呼ばわりされてプライドを傷つけられたエリオスが、自ら戦いのくさびを斬った。
     鞘から引き抜いた隼の剣を片手に、漆黒の騎士の首筋を狙って切り込む。
     速い! 誰もが思った。だが、エリオスの剣は敵に届く寸前になぜか止まってしまった。
     否、自分自身で止めたのだ。
     額から、一筋の冷や汗が流れ出る。
    「ほう。よく止めたな」
     漆黒の騎士は腰に帯びた剣に手を付けていた。柄を握っているだけで、刃を抜いてはいない。だが、エリオスには確信があった。もし、あのまま切り込んでいたら、間違いなく自分の剣が相手に届く前に、こちらの首が飛んでいただろう。
    「くそっ」
     即座にエリオスは後ろに跳躍して距離を取る。
    「エリオス。無茶をするな」
     ロムもすでに剣を引き抜いて彼の横に並ぶ。
     彼も幾度となく死線をくぐり抜けてきた歴戦の勇士だ。目の前の男の実力は、剣を交えなくともわかっていた。
     とてつもなく、強い。
    「セイン。この場は僕とエリオスが食い止める。君たちははやく行くんだ」
    「ロム。しかし、二人では」
    「いけっ!」
     どん、とロムは彼の背中を強く叩いた。
     そのまま、今度は自分から漆黒の騎士に突貫する。
    「いきましょう!」
     アイメルがまだ躊躇しているセインの背中を押す。
    「ここは、ロムを信じましょう」
    「……わかった」
     セインは観念して頷いた。アイメルとて、ロムを残していくのが平気なわけではないのだ。そんな彼女が身を切る思いでセインを促したのだ。もはや彼にはこの場を退くしかできなかった。
    「二人とも、死ぬなよ! いくぞ、メッキーとやら」
    「おうともよ」
     メッキーは再びルーラを唱えた。ロムとエリオスを残して、三人は空高く舞い上がる。
    「させるか!」
     漆黒の騎士は懐に偲ばせたナイフを投げる。だが、その一撃はロムがかろうじて剣で弾いた。
     あっという間に、メッキー達の姿は視界から消えた。
    「逃がしたか。だが、まぁいい。先にお前らから片付けてやる」
     漆黒の騎士はそういうと、鉄仮面ごしにギラリとした視線を二人にぶつけた。
     殺気のこもった眼力だ。普通の人間なら、剣すら交えることなくショック死するほどの威圧である。
     ロムは全身に寒気が走るのを感じた。
     こいつは、やばい。
     戦いに必要な技量、腕力、胆力。その全てが極限までに鍛え抜かれている。この漆黒の騎士は、戦うために産まれてきたような男だった。
     ロムは悟った。まともに戦ったら、今の自分には勝ち目はない。
     自分だけの力なら……
    「ロム。同時に仕掛けるぞ」
     エリオスが小声で呟いた。
    「エリオス」
     そうだ。たとえ一人では勝てなくても、自分には心強い仲間がいるじゃないか。
     ロムは気持ちを奮い立たせた。
     仲間を、エリオスを信じるんだ!
    「いくぞっ!」
     二人は同時に飛んだ……!


     続く
     


     
     


     

     
     




     
     
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