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2016.05.05 Thursday

反竜伝記 anotherstory ACT5  新たなる船出

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    「死ねぇっ!!」
     キングマーマンの鋭い爪が、ロムの眼前に迫る。
     だが、ロムは一歩も動けない。身体に、力が入らない。
     やられる、そう思った時。
    「グギャアアッ!」
     なんと、悲鳴を上げたのは、キングマーマンの方だった。
     見ると、キングマーマンの手に一本の矢が突き刺さっていた。
    「ロム、いまのうちに逃げて!」
     矢を放った主が、続けざまに射る。
     正確な射撃である。彼女の放った矢は、吸い込まれるようにキングマーマンの左目に突き刺さった。
    「いまだっ!」
     その隙をすかさずエリオスが突く。彼の繰り出した鋭い突きが、キングマーマンの首をえぐる。
    「ギョエエエェェェェッ!」
     急所を攻撃されては、さすがのキングマーマンもどうしようもなかった。彼はよろめきながら海中に没し、二度と浮かんではこなかった。
     戦いが終わり、エリオスは剣を鞘に納める。ロムもなんとか立ち上がろうとするが、バランスを崩してよろめいてしまう。
     地面に倒れる、そう思った時、暖かな感触が彼を包んだ。
     何者かが、ロムを支えたのだ。
     その暖かなぬくもりを、ロムはよく知っていた。
    「もう、無茶ばかりするんだから」
    「アイメル。どうしてここに」
     そう、ロムの絶体絶命のピンチを救ったのは、彼のもっとも親しき女性アイメルだった。
    「もちろん、あなたと共に戦うためよ。忘れたの、私はあなたお付きの近衛隊長なのよ」
     そういって、アイメルはにこっと微笑む。
    「ヒューヒュー、お熱いな、お二人さん」
    「セ、セイン」
     ロムは顔を赤らめて、アイメルから離れた。
    「しかし、アイメル。知らなかったな。君が弓の達人だったなんて」
     エリオスも舌を巻いた様子だった。彼の中では、アイメルは魔法使いの印象が強い。
    「私ももう、魔法は使えませんから。その分、弓を練習したんです。それよりもロム。私に黙っていっちゃうなんて、ずいぶん冷たいのね」
     アイメルは腰に手をあてて、ややむすっとした顔をして言った。
    「ご、ごめん。あ、い、いや、危険な旅だから、君を巻き込むわけにはいかなかったんだよ」
     ロムはばつが悪そうに髪を掻きながらあやまる。
    (まるで嫁さんに頭の上がらない旦那って感じだな)
     やれやれと、エリオスは苦笑した。この二人は相変わらずのようだ。



     何はともあれ、なんとか港に現れた魔物を退治することができたロム達は、そのことを先ほどの男に報告した。
     男はいたく感激し、英雄の活躍を讃えた。また、ロム達の活躍はあっという間に港中に広まった。
     恩人からゴールドは取れないと、無料で船に乗せてくれると言う船長の厚意を気持ちだけ頂くことにして、ロム達はポートセルミ行きの船に乗り込んだ。



     一方、その頃……



     どことも知れない、薄暗い闇の中。
     黒ずくめの一人の男が、ワイングラス片手に、美酒に酔いしれていた。
     その男の前で一匹の魔物がひざまずいている。
    「……そして、ロム達は我らが密かに差し向けた魔物を撃滅。ポートセルミへと向かいました」
    「そうか。ふっ、あれしきの魔物に苦戦するとはな。力を失った元勇者など、恐れるに­りぬ存在ということか」
    「いかがいたしましょう。今度は、もっと強力な魔物を送り込みましょうか」
    「いらぬ、放っておけ」
    「し、しかし」
    「案ずることはない。それよりも、例の計画に、抜かりはないだろうな?」
    「ははっ、順調であります。万事抜かりなく……」
    「そうか、ククク……」
     口元をゆがませて、男はグラスの液体を飲み干した。




     謎めいた者が策謀を巡らせていることも知らないまま、ロム達を乗せた船は大海を進んでいた。
     航海は順調だった。あれ以来魔物の襲撃もなく、天候も穏やかだ。
     海上では特にすることもなく、ロムとエリオスは船室でモンスターチェスをしながら、暇を潰していた。
     セインは自室に籠もって瞑想中。アイメルは厨房を仕切るメイドやコックと一緒に、夕食の手伝いに出かけている。
     もちろん、二人もタダで乗船させてもらっている手前、何か手伝えることはないかと船長に聞いたのだが、恩人に働かせるなどとんでもない、と丁重に断られてしまった。
    「君とこうしてチェスを打てる日が来るなんて、思ってもみなかったよ」
    「何せ、最初は敵同士だったからな。不思議なものだ」
     笑いながら、エリオスは駒を動かす。
    「しかし、今回の旅の目的だが……」
    「うん。別世界の勇者とその仲間達を探す旅……か。しかも、あのゾーマと戦ったという」
    「あんな化け物と戦って、命が無事だっただけでも大したものだ。だが、一体どこにいるのやら……ロム、ポートセルミで情報を探すとのことだが、本当にそんな情報が体よく転がり込んでくるだろうか」
    「実はポートセルミには、知り合いの情報屋がいるんだ。彼の持つ情報網を、宛にするしかないな」
    「む、いつの間にそんな輩と知り合いになったのだ?」
    「古い知り合いだよ。君とは、面識はないけどね、っと。はい、チェッックメイト」
     ロムがスライムナイトの駒をピッと置く。
     しまった、と、エリオスは苦虫を噛みしめた顔をしてロムにまったをせがむのだった。






     数日後。何事もなく船はポートセルミの港に到着した。
     ポートセルミ。世界一の規模を誇り、様々な国から船や人が集まる、文字通り世界の中継地点だ。
     あの戦い以来、世界的に貿易が盛んになった現在において、もっとも活気に溢れているといっても過言ではない。街の往来にはラインハット人、エンドール人、テルパドール人と様々な人種の人々が行き交っていた。
     例によって見慣れぬ光景につい­を止めてしまうセインをなだめつつ、ロム達は目的地へと向かった。


     そこは、華やかな表通りとは正反対の、薄暗い裏通りにあるスラム街だった。
     貿易地であり、観光地でもあるポートセルミの裏の顔。ごろつきや盗賊、さらにはモンスターまでが顔を利かせるアンダーグラウンドな空間だ。
    「いかにも治安の悪そうな場所だな」
     セインは警戒ぎみに言う。
    「こんなところに、君の言う情報屋なんているのか?」
    「うーん、僕も詳しい場所までは知らないんだ。メッキーっていって、父さんの昔の仲間なんだけど、風の噂でここで店を構えているってことしか」
     ロムも困ったと頬をぽりぽりと掻く。
    「ちょっとおっかないけど、その辺の人に聞き込みをするしかないね」
    「やれやれ、情報屋を探すためにその情報屋の情報を集めなければならないはめになるとはな。情報屋だけに」
    「……」
     アイメルは黙って頭を抱えた。やはり、帝国のしがらみから開放されて以来、エリオスはちょっと変わった気がする。
     その時だ。
    「へっへっへ、なにやら、お困りとお見受けしやすが、ここはあっしに任せてはくれませんかねぇ?」
     気配もなく突然聞こえたしゃがれた声に、一行はびっくりしてその人物に目を向けた。
     そこにいたのは、人間ではなかった。いわゆる、人狼と呼ばれる半獣の魔物、俗に言う『山賊ウルフ』だった。
    「あんたは?」
     セインが訊ねる。
    「へい、あっしはこの辺りを縄張りにしている、盗賊ギルドの者でさぁ。名前はゾル。どうぞ、お見知り置きを」
    「盗賊ギルド?」
     聞き覚えのない名称に、ロムは首を傾げる。
    「その名の通りの盗賊達の組合だ。盗品や発掘品の売り買いから、探偵まがいの情報集めまでやる、ろくでもない集団だ」
    「へっへっへ、まぁ、否定はしやせんけどね」
     ゾルと名乗った山賊ウルフは皮肉を気にすることなく不敵に笑った。
    「申し訳ありやせんが、先ほどのお話、聞かせていただきやした。なんでも、メッキーの旦那の居場所を知りたいとか」
    「知っているのかい?」
     と、ロム。
    「えぇ、あっしらの中でも名が知れた情報屋ですからね」
    「それで、どこにいるんだい」
    「おっと、旦那。それを知りたければ、まずはそれなりの代金をお支払いして頂きやせんと」
    「そ、そうか。しょうがないな」
     と、財布を取りだそうとしたロムの手を、アイメルが掴んだ。
    「だめよ、ロム。そんなに簡単に信用しちゃ」
    「アイメルの言うとおりだ。盗賊ギルドの情報など、信用できるはずがない」
     エリオスも不信感を露わにして言う。
    「へぇ、では、ご自分で探しますか? 言っときますがね。メッキーの旦那の事務所は、探そうとしてもなかなか見つかりませんぜ。何せ、イリーガルな情報を扱っている手前、敵も多いですからね。事務所に看板なんて出してはいませんよ」
    「でも……」
     それでもしぶるアイメルとエリオスだったが、それまで黙って一部始終を見守っていたセインが割って入った。
    「いいんじゃないか。そいつの情報とやらを買えば、メッキーとやらの居場所が明らかになるのだろう」
    「しかし、嘘を言われるかも」
    「それなら大丈夫だ」
     そういうと、セインはパチンと指を鳴らした。
     すると、彼の手から光の輪が出現し、ゾルの頭上に浮かぶ。
    「な、なんですかい、これは?」
    「ちょっとした呪文さ。このわっかは、お前さんの心拍や呼吸を正確に読みとることができるんだ。人は嘘をつくとき、自分でも気づかないうちに心臓の鼓動が速まったり、呼吸が乱れたりするからな。もし、嘘を言おうものなら……」
    「い、言おうものなら?」
    「頭上のわっかは派手に爆発することになるな。威力はイオ並だから、火傷どころではすまないぞ。下手すれば、頭が吹っ飛ぶな」
    「セ、セイン! それはいくらなんでも」
     ロムは慌てて止めようとするが、ゾルはいいでしょう、と受けて立つ言い方をした。
    「あっしも盗賊としてのプライドがあります。確かに盗賊は相手を騙したりもしますが、それは必要に迫られた時だけ。そうでなれば、ギルドなんて成り立ちやしませんぜ!」
     と、ゾルはどんと胸を叩いて力説した。
     その姿を見て、ロムは少しでも疑いの目で彼を見てしまった自分が恥ずかしくなった。
    「セイン、いいよ。やめよう。僕は、ゾルを信じるよ」
    「いいのか?」
    「もし、それで騙されるようなことがあったら、僕の人を見る目がなかった、ただそれだけのことさ」
     そういうと、ロムは財布から数枚の金貨を取り出して、彼に差し出した。
    「これで­りるかい?」
    「い、いいんですかい? こんなに貰って」
     ロムは知らなかったが、彼が出した額は相場の二倍近い金額だった。
    「そのかわり、しっかりたのむよ」「へぇ、まかせてください! 旦那!」
     ゾルはぱんと手を叩いて言った。



     ちなみにこれは余談になるが、ゾルが去った後、エリオスは未だにうかんでいるぶっそうな丸いわっかのことをセインに言った。
    「おい、いい加減これを何とかしろ」
    「あぁ」
     そういうと、セインは手にした杖を振り回してわっかをかき消した。
    「お、おい! そんな乱暴にしていいのか。もし、爆発でもしたら」
    「するわけないだろう。これは単なる光。レミーラの呪文の光だ。かざすだけで相手の心拍を察する呪文なんて、あるわけがない」
    「なっ、なんだって。じゃあお前、はじめからあいつをペテンにかけるつもりで」
    「……ふっ、まぁな。だが、ロムのおかげで、必要なくなった。やはり同じ勇者だけあって、どことなく似ているな。あいつに……」
     そういって唇に笑みを浮かべると、マントをなびかせて一行の先頭を歩き出した。


     続く
     
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